リンパ浮腫の手術について

保険診療で、体に負担の少ない日帰り手術を実施しています。
当クリニックでは、局所麻酔にて手術を行っております。
全身麻酔をご希望の患者さまは、八尾市立病院にて手術を行います。

当クリニックでは保険診療で行える、リンパ管細静脈吻合手術を、日帰り手術にて実施しています。この手術は、がん手術等によってせき止められてしまったリンパ管に、別の通り道「バイパス」を作って、静脈へとリンパ液を流すものです。基本的に手術は局所麻酔によるもので、体への負担が少なく、Ⅰ期~Ⅱ期後期までの症状で有効なことがわかっています。しかし、なるべく早期に手術を行うことで、より高い治療効果が望めますので、医師と相談の上、ご検討ください。

閉塞したリンパ管の図
リンパ管から静脈へ「バイパス」を作る図

リンパ管細静脈吻合手術について

リンパ管細静脈吻合手術は、リンパ管と静脈をつなぎ合わせることで、溜まっているリンパ液を静脈に戻す手術です。手術前にインドシアニングリーン(ICG)蛍光リンパ管造影、超高周波超音波等の検査を行い、リンパ管と静脈の位置を確認、切開位置を決めます。手術は局所麻酔下で行いますので、患者さまとはお話ししながら、場合によってはモニターを見ながらご説明することも可能です。局所麻酔ですので体への負担も少なく、皮膚切開も、皮下脂肪が厚い場合は数センチになりますが、最小では15mmくらいで傷跡は気にならない程度です。

手術では、肉眼で見えないほどの細い針と糸を用いて、顕微鏡下でリンパ管と静脈を吻合していきます。いわゆるスーパーマイクロサージャリー(超微小外科手術)のひとつで、高度な技術を要するものです。1か所あたり、30分程度かかりますが、複数個所で処置を行うこともあり、その場合は2~3時間の手術になります。

リンパ管とつなぎ合わせる方法としては、リンパ管と静脈それぞれを切断し、切断面どうしを縫い合わせる「端端吻合」と、リンパ管の側面に穴をあけ、その穴に対して静脈をつなぎ合わせる「側端吻合」などが主なものです。

「端端吻合」では、細いリンパ管でも縫い合わせることが比較的容易で、特に静脈が2本近くにある場合は、リンパ管を切断した際にできる二つの断面を、ともに静脈につなげることがより有効であるとされています。

「側端吻合」では、リンパ管を切断しないことで、吻合部に万が一支障が起きてふさがってしまった場合でも、元のリンパの流れは障害されず、またリンパ管内の逆流にも対応できるというメリットがあります。一方、リンパ管が非常に細い場合、あるいは静脈が遠い場合は、難しいものとなります。

当クリニックでは、患者さまをしっかりと診断した上、手術実施の可否、また手術する場合の手術法について、慎重に決定してまいります。また、リンパ管細静脈吻合手術後も、圧迫療法などは継続する必要性もありますので、術後のケアも含め、患者さまの日々の生活の質が、よりよいものとなるよう、丁寧にフォローいたします。

リンパ管細静脈吻合手術の流れ

  • step1 当クリニックが初めての方は、まずはお電話にてご予約ください。
  • step2 初診では、問診、触診、超高周波超音波検査およびICG蛍光リンパ管造影により、実際にリンパ浮腫であるかどうか、症状はどの段階にあるか、などの診断を行います。
    ※CTやMRI、リンパシンチグラフィーなどの検査が必要と判断した場合、提携病院にて受けていただくこともあります。
  • step3 検査の結果を判断し、リンパ管細静脈吻合手術が適応と判断され、手術をご希望される場合は、手術方法について、また術前術後の食事、入浴、服薬、運動についてなどをご説明いたします。さらに術前検査として血液検査を行います。
  • step4 手術当日は、術前にICG蛍光リンパ管造影および超高周波超音波検査を実施します。その後、局所麻酔をし、手術します。所要時間は複数個所の吻合を行う場合は2~3時間です。
  • step5 手術終了後は、切開個所に防水テープを貼り、弾性ストッキングまたは包帯で部位を圧迫します。また局所麻酔なので、手術後は歩いて帰宅することができます。
  • step6 手術の2~3日後に、切開個所の状態を必要に応じて診察いたします。
  • step7 手術後1~2週間後、再度、切開個所の診察を行います。
  • step8 手術後1~6カ月にかけて、随時、リンパ浮腫の状態を診察いたします。必要と判断された場合、追加でリンパ管細静脈吻合手術を行うこともあります。

比較的早い症状の段階では、このリンパ管細静脈吻合手術が第一選択となりますが、組織が線維化し、硬化が進んでしまっている場合は、大きな効果が期待できないため、リンパ節移植や脂肪吸引などの手術が必要となります。

生活習慣について

手術療法とあわせ、日常での生活習慣もリンパ浮腫の改善のためには重要になります。たとえば肥満は脂肪がついて手足が太くなるだけではなく、リンパ管でのリンパ液の流れを妨げることもあります。リンパ浮腫のリスクや悪化を避けるためにも、体重増加には気を付けましょう。

生活習慣のイメージ画像

筋肉のポンプ機能は、静脈の働きを助けます。静脈の血流が良好になれば、リンパの流れにも良い影響を与えますので、運動をして腕や足の筋肉を使うことはリンパ浮腫の改善にとって有効です。

リンパ管やリンパ節は免疫細胞の通り道でもあります。これらに障害があったり、切除してしまうと、免疫機能も低下しますので、皮膚は常に清潔に保ち、なるべく手術した側の腕や足に傷をつけないよう、また水虫など皮膚の細菌感染や炎症を極力避けるようにしましょう。

リンパ浮腫についてのよくあるご質問